影を拾った太陽
嫌な予感が頭を過り、桐ヶ谷くんのおでこにそっと触れてみた。
「ひ、酷い熱!」
桐ヶ谷くんのおでこは尋常じゃないくらい熱かった。
こんなに高熱が出ているのに、さっきまで平静を装っていたの!?
「だ、大丈夫!?」
とにかく声をかけてみるけれど
「だ、だい、じょう、ぶ、だよ……」
息を切らして言う桐ヶ谷くんは明らかに辛そう。
ど、どうしよう。
こういう時どうすれば良いの?
私、今何も持ってないよ。
そうだ!
ビリビリ
「おい!っ、何してんだよ!」
桐ヶ谷くんの声にお構いなしに、制服の袖を引きちぎった。
お化けの役しなくて、本当に良かった。
みんなで作った衣装、破けないもんね。
「待ってて、そこの水道で濡らしてくるから!」
昔ながらの教室。
部屋の後ろに隠れるようにしてポツリとある水道に走った。
ちゃんと水が出るか不安だったけど、きちんと出てくれた。
濡らした制服の袖をタオルみたいに巻いて、桐ヶ谷くんのおでこの上に乗せた。
これで、少しでも楽になれば良いんだけど。
「お前、バカだろ。んな格好じゃ今度はお前が風邪引くぞ」
「だ、大丈夫だよ!私強いから!」
確かに秋とはいえ、もう十一月。
流石に半袖でいるのは寒い。
でも、こうするしか思いつかなかったんだもん。
「たくっ。あそこにあるパーカー使って良いよ」
「え?」
桐ヶ谷くんが指さす先には、机の山の上に置かれた灰色のパーカー。
私に、貸してくれるの?
「俺の看病したせいで、風邪引いたなんて思われたくねぇしな」
そんなこと、思わないけど……。
でも、貸してくれるなら恩に着るか。
無造作に置かれた桐ヶ谷くんのパーカーを取って、片方袖をなくした制服の上に羽織った。
男ものだからか、少し大きい。