ユルトと精霊の湖
やって来た動物達はふさふさとした自らの被毛でくるむようにして、冷えた小さな体をあたため、出産したばかりの女鹿が乳をやろうと進み出た。
もう大丈夫だろう、と、子育てに関して全くわからない湖精は、その場を動物達にまかせ、赤子の来た場所を探すことにする。
川沿いの木々に訊ねながら、上流へと遡り、赤子の痕跡を探す。
立ち止まり、木々に話を聞いて、また遡る。
何度もそれを繰り返して、山のふもとの滝に辿り着いた時、ようやく湖精は、事の顛末を知ることができた。
湖精にそれを教えてくれたのは、滝つぼをぐるりと囲む木々達。
彼らが言うには、太陽が昇るか昇らないかの頃、滝の上から人間達が現れ、血の匂いのする布に包まれた何かを放ったのだと言う。
血に汚れた布は、来る途中で見つけた。
そこから下流では、赤子が流れていた、という話がいくつもあったから、その布に包まれていたものが赤子だったのだろう。
人間は、なぜ、腹を痛め、生んだ我が子をこのように、冷たい水に放り込んだのか……
湖精には、人間の考えが全くわからなかった。