ユルトと精霊の湖
川を上り、湖が向かったのは、あの胎の中。
水の眷属しか入れないだろう小さな入り口から滑り込むと、中には、すっかり大きくなった赤子がいた。
「ああ……」
湖精は、ため息を漏らし、成長した赤子を抱きしめる。
ずっと気になっていた存在。
来る日も来る日も、こうして抱きしめる日を待ち望んでいた。
しかし、森に迷い込んだあの子供を見てしまった今では、以前のように満たされた気持ちで抱きしめることができない自分がいた。
こうして改めて見てみれば、もう赤子とは言えない大きさなのがはっきりとわかる。
あの迷子の子供より少し小さいかもしれないが、既に幼児と言うには大きく、歩いても走ってもおかしくないくらいの年頃だろう。
この精霊の力あふれる胎の中で育ったせいか、赤子は別れた時の倍近く大きくなっている。