ユルトと精霊の湖
精霊達を統べる王たる存在。
木や花や水が長いこと存在するうちに、いつしか宿るようになる他の精霊達と違い、彼らの王たる存在は、数千年に一度、先代の王が眠りに着くと共に、王の樹から生まれ落ちる。
唯一の存在であるはずのその存在が、初めて数を違えた。
古より存在してきた彼らにもたらされた、初めての双子の王。
それが、彼らだった。
「姿など、好きに変えられるくせに何を言う」
そう言えば、相手の姿はするすると引き伸ばされたように大きさを変え始める。
身にまとう色はそのままで、成長を早回ししているかのように姿が変わっていく。
幼い少女から、男でも女でもない優美な曲線を描く、しなやかな姿への変貌。
見た目などいくらでも操れるが、王達はそれぞれの本質に近い姿でいることが多かった。
一方は、少女のような幼さを残した無垢な姿。
一方は、成熟する一歩手前のような清々しい姿。
そして、倍ほども背丈が伸び、それぞれがいつもの姿になったところで、ようやく、小さな方の王は面白くもなさそうに言った。
「久方ぶりだな、我が半身よ」