ユルトと精霊の湖
「本当に……こうして顔を合わせるのは、どれくらいぶりだろう」
再会を喜ぶような言葉を吐きながらも、ぴくりとも表情の変わらぬ相手を、小さな王は不愉快そうに見やる。
「……何用だ?」
「断りもなく森を出て行くから、様子を見に来ただけのこと。さしたる用はない」
「出て行く、とは心外な。ちょっと散歩をしただけだ」
青年の王から顔を背け、小さな王は不機嫌そうな低い声で言う。
「いちいち監視をするために出て来るとは……よほど、片割れを信用できぬと見える」
「……そのようなことはない」
僅かな間の後で、さらり、と返す声は涼やか。
「我は監視などする必要もないが、皆が心配するだろう」
「そう、そんな必要などない。我らならば、な」
舌打ちでもしそうな様子で片割れを見上げ、小さな王は近くにあった巨木の幹を音がするほどに強い力で叩いた。
「見ていたのだろう?!ここ、で」
精霊達は、全てでひとつ。
常にどこかで繋がっている。
彼らの力の及ぶ場所ならば、知ることなど造作もないことなのだ。