ユルトと精霊の湖

たとえ、今回よりももっと遠く離れた場所であっても、見ることは難しいことではない。

姿かたちは違っても、彼らは紛れもない精霊の王たる存在ならば、手近な木や草に触れ、知りたい、と念じるだけでいい。

王同士に関しては、また違った方法もある。

それぞれ違う王ではあれど、確かに王であれば、全ての精霊王を生み育てる母なる大樹を通して繋がることができるのだ。

相手がどこで、何をしていても、彼らには、全てが手に取るように感じることができる。

こうして会えば争うばかりの姿勢をとる小さな王も、最初から、この片割れを遠ざけようとしていたわけではない。

生まれ出でたばかりの未成熟な頃は、2人で一つ。

そんな感覚を持っていたのか、いつでもどこでも双子の王は寄り添っていた。

小さな双生王が揃って出歩けば、周囲は歓喜し、彼らを授けて下さった母なる大樹には、更なる敬意と感謝が捧げられた。

これまで唯一で、絶対であった存在が2つになり、精霊の世の輝きは増すばかり。

喜びも、繁栄も、倍になるのでは、と思われた……が。


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