ユルトと精霊の湖
同じ樹に時を同じくして生まれても、それぞれが別の存在。
一方が静を好めば、もう一方は動を好み。
一方が是、と言えば、もう一方は否、と言う。
双頭の蛇が思うままに進もうとすれば、身を裂くしかなくなるように、このままでは、世界は均衡を崩す。
そう考えた一方の王は、ある一定の周期で、それぞれが眠りにつくという提案をした。
最初は渋っていたもう一方の王も、何度か話し合いを重ねた後に、その提案を受け入れ、眠りについた。
そうして、何巡目かの眠りから、小さな王は目覚めたばかり。
目の前の青年の姿をした王は、入れ違いに眠りに着いているはずだった……けれど。
「何のつもりだ?」
かみつくように、再び問う小さな王に動じることもなく、青年の王は涼し気な面を崩すことなく答える。
「……さしたる用はない」
そう言いながら、青年の王は帰る様子もなく、周囲の木々などを眺めはじめる。
小さな王は、その様子に鼻を鳴らした。