ユルトと精霊の湖

確かに、歴代の王のほとんどは、この王の森から出ることはなく、自分と同じように、この森から世界を知り、時の移ろいを感じて来た。

しかし、小さな王が行くところ全てに、この森からは知りえなかった事や、小さな眷属達の暮らしぶりがあった。

この森からでは、知りえないことがある。

そのことは、更に青年の王に衝撃を与えた。

王の森へ届くまで、切り落とされている小さな事柄。

そぎ落とされてしまっている眷属達の声。

そういった、ここまでは届いてこなかった小さな彼らの様子を、小さな王は足を運んで見聞きし、面白がり、時折、困っていることがあれば手を差し伸べていた。

それほどの回数ではないし、それほど遠くでもない。

しかし、そうした時の小さな王は、とても満ち足りていて。

とても……幸福そうだった。


「2人でひとつ…………ならば、よかったのだがな」

誰にともなくつぶやいて、青年の王は、ひとり、瞳を陰らせた。


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