ユルトと精霊の湖
青年の王とて、小さな王の苛立ちに気づかなかったわけではない。
小さな王の様子を見るたび、その行動を相手がどう感じているのかがわかる。
最初はぼんやりとした霞のようなものだったそれが、あきらかな不快感となって自分に向けられているのを知るまで、そう時間はかからなかった。
「どうしてだろう?」
愛しい片割れが気に入りの泉を訪れた青年の王は、迷子の子供のように、心もとない目をしてつぶやいた。
「我らは、時を同じくして生まれた双子の王。それなのに、あやつは……」
言葉を失って、泉の縁に腰を落とした青年の王に、泉の精霊達は優しく寄り添った。
「我らは共にあるべき存在。そうであろう?」
「王よ……嘆かないで」
宥めるように髪を撫で、身を寄せる泉の精霊は、初めて見た時から変わらぬ若く美しい娘の姿をしている。
よく飽きないものだと思っていたが、その変わらない指先に安心しているのを、私は少しだけ恥ずかしく思った。
「あれが、共にいることを避けるようになったのは、いつからのことだったか…………もう随分と昔のことで思い出せないほどだ」