ユルトと精霊の湖
最初は、確か、1人で出かける、と言い出して。
一緒に行く、というと、1人にしてくれ、と断られた。
そんなことが徐々に増え、顔を合わせて語らう機会もほとんどなくなって。
ある日、小さな王は、数十年か数百年の期間を定め、交代で森を治めようと言い出した。
共にいれば、諍いばかりで森が荒れる、と、小さな王は言った。
息苦しいのだ、とも、小さな王は言った。
それは決して簡単に受け入れられるものではなかったが。
話し合えば合うほど、肉を持たないこの身を切られるような言葉を投げかけられるのがつらくて、ついには応じてしまった。
……応じるしかなかった。
あの頃から、小さな王は、外の世界に関心を持っていた。
この森の内よりも、外を見たいと考えていた。
共に生まれた双子の片割れよりも……外にいる、非力な人の子達を見ていた。
「あれは、嫌っているのだろう。この森で長き時を過ごすことを…………そして……」
「いいのよ」
抱きしめる泉の精の腕の中で、青年の王はつぶやいた。
「嫌っているのだ…………私を」