ユルトと精霊の湖
眠りにつくのを拒んでから、まだほんの少し……
人の子の数えで言うならば、ほんの数年しか経っていないにも関わらず、小さな王は、徹底的に青年の王を避け、顔を合わせないようにしているようだ。
この森を、交互に治めるという提案に異を唱えたいわけではない。
その約束を反故にしたいわけでもない。
ただ、ほんの少しだけ……
その交代の合間に、以前のような交わりを持ちたい、と願うのも、許されないのか。
交互に眠りにつくようになって諍いは減ったが、この青年の王の悲しみは和らぐことなく、時を経るごとに増していくようだった。
「我は……どうしたらいいのだ?」
泉の精霊を含め、この王の森に息づく者達は皆、この寂しい青年の王を敬愛していた。
青年の王が治める時、この森が荒れたことは無く、住まう者は皆、常よりも穏やかな安心感に包まれ日々を暮らすことができた。
しかし、彼らは、これまでの王と違い、自由な気質を持つ小さな王も、同じように愛していたのだ。