ユルトと精霊の湖
もう1人の王が苦悩していた頃、小さな王も、泉の精だけでなく、その他の……決して少なくはない数の眷属達に、進言と言う名の説教をされ、窮屈な状況に追い込まれていた。
片割れはどういうわけか、眠りにつく気配もなく、森の中をウロウロしているようで、顔を合わせないようにするのはなかなか難しかったが、何度かやっているうちにコツを掴んで慌てることなく動くことができるようにはなる。
要は、相手の気配を読み、思考を先回りし、その場所を避ければよいだけの話。
そうわかってしまえば、特に面白くもないことだった。
「これが、精霊王らしい生活、か……」
つまらない……そう思ってしまう自分は、王として不出来なのだろう。
どうにか我慢できたのは、最初のうちだけ。
太陽が昇り、月が満ち欠けを繰り返し、落ちた実が、芽生え、小さな若木になる頃には、小さな王は始終イライラとあてもなく森の中を歩き回るようになった。
どこか、行きたい場所があるわけではない。
だけど、どこかに行きたかった。
思い返してみれば、この世界に生まれ落ちた時から、小さな王はそう考えていた。
遠くに行きたい。
どこか知らない、見たことも、聞いたこともない場所へ。