ユルトと精霊の湖
・そして…生まれる
眠りについた小さな王が、再び目覚めた時。
視界は、いっぱいに広がる明るい緑で埋め尽くされていた。
常ならば、目が覚めて、最初に目に入るのは黒に近い王の樹の肌。
もしや、まだ眠りの中にいるのだろうか、と、小さな王が目を瞬かせていると、明るい視界に3つの青い影が落ちた。
「お目覚めですか?我が王よ」
見慣れた若い女達の顔が、揃って小さな王を覗き込み、淡く微笑む。
「ああ……おまえたち……ここは……泉か?」
「……ええ」
「これは……なぜ?……何かあったのか?」
いつもの通り、王の樹の洞の中で眠りについたはずなのに。
目覚めた時に、別の場所にいるというのは、生まれ落ちてから初めてのこと。
「いきさつは、私達からではなく……」
その言葉の先を拾うように姿を現したのは、青年の姿をしたもう一人の王。
その姿を目にした小さな王は、この状況を察し、不機嫌に顔をしかめる。
「どういうことだ……」