ユルトと精霊の湖

小さな王が言うと、青年の王は失念していた、とでも言うように笑い、また少し小さくなった片割れを見て淡く微笑んだ。

「ああ…………まるで、人の子のようだ」

目を細める青年の王を見て、小さな王は何かを思い出したように手を打った。

「私に、名をくれ」
「名?」
「そうだ。人の子はみな、それぞれ持っているらしい」

青年の王も、何かを思い出したように、声を漏らした。

「そうか、確かに……名、か……」
「人の子として旅をするのだ。名くらいなければ、おかしいだろう」
「それは、そうだな……」

ふむ、と唇に指を当て、改めて小さな王を眺めた青年の王は、しばらく何かを考えたのち、ぼそりと言った。

「……ウィリデ・イーレ・ウィウィドゥス・ノウェラディクス」
「ウィリデ・イーレ・ウィウィドゥス・ノウェラディクス?」

繰り返した小さな王は、怪訝そうに眉を寄せた。

「なんというか……その、それはちと……長くはないか?」
「長いと何か問題でも?」
「いや、問題ないかもしれないが……人の子の名というのは、ジョンだの、ユルトだの、もっと短いものかと……」


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