ユルトと精霊の湖
不満そうに言う小さな王を見返した青年の王は、さっと手を上げ、木の根元で頭を揺らす小さな花達を指さした。
「あの花の名は、ウェイチー・カイハオ・ヤイマオチンフーバ、という」
「……そうなのか?」
「ああ」
胸を張って言う青年の王に、小さな王は首を傾げて問う。
「なぜ、そんなことを知っている?」
「前に人の子がそう言うのを聞いたのだ。間違いない」
「人の子が?」
「そうだ、間違いない」
「うーむ……私はそのように呼ばれているのを聞いたことはないが……」
「私は聞いた。だから、そなたの名も、同じくらい長くてもいいと考えたのだ」
そもそも、この森から出ることのないはずの青年の王が、一体どこでそれを耳にしたのか……
疑問は、小さな王の顔にも現れていたのだろう。
その思いを断ち切るように、青年の王は片方の眉を上げ、小さな王を見下ろす。
「人の子の生は短い。そういった長い名を口にしてしている暇もないのだろう。普段は短く、名の一部を呼ぶことにしているのではないか?」
「……なるほど」