ユルトと精霊の湖
まあ、いい。
色々と訊きたいことはあるが、今はこれまで抑えこんできた興味を満たす方が先だ。
「……ウィリデ・イーレ・ウィウィドゥス・ノウェラディクス、か」
口の中でを咀嚼するようにした後、小さな王は青年の王を見上げる。
「機会があれば、そう名乗るとしよう」
ニッと笑って小さな王が差し出したのは、先ほどまで身の内にあった膨大な力を圧縮した虹色に輝く珠。
小さな王が脱いだ殻とも言うべき、王の力の塊。
受け取った、手のひら大の珠を握りしめると、あたたかな力が脈打ち、光の速さで王の中へしみ込んでくる。
「……あ……あ、あ……」
溶けあう力は1つとなり、双生王と呼ばれた存在は、新しい2つの存在へと変化を遂げる。
握りしめた手のひらからの力が、眩い光の爆発を起こす。
光にのまれ、遠ざかっていく意識の中で、青年の王は愛しい片割れの声を聞いた。
「それでは、しばしの別れだ。新たな……精霊王よ」