ユルトと精霊の湖
濃い青の目に白い肌、銀粉を散らしたように光る長い髪。
この森に3つある、源を同じくする泉の精霊達は、そろって同じ顔、同じ色の瞳で王を見つめて歓声を上げた。
「王というのは、ただひとつの存在だと思っていましたのに!」
泉の精の声に、頷く気配の精霊達。
すると、もう一人の泉の精が喜びにたえない様子で叫ぶ。
「双生の王を戴けるなど、これまでにない出来事…望外の幸せですわ!」
「王さまふたり。よろこびも2ばい」
その声に同調するように、最後の泉の精がつぶやくと、泉の精達はあれよあれよという間に側付き達の間をすり抜け、王を取り囲んでしまった。
その動きの早いこと早いこと……まさに水の流れるごとく。
一連の様子を、初めこそ不思議そうなに眺めていただった王達だが、すぐに何かを察したように、その姿は小さな形を成し始める。
森の緑を凝縮したような、黒とも見紛う濃い緑の髪。
白く小さな顔は、まだ幼いが、美しく、周りを囲む泉の精達を模したもののようで、どこか似た造作をしている。
「まあ!なんて素晴らしい!」
「これほど早く、姿を形作られるとは……」
「すごい!」
ひとしきり姦しく騒ぎ立てた後、泉の精達はひざまずき、主となる双子の王に揃って頭を垂れた。
「我が王よ。わが水の尽きるまで……いついかなる時も、お仕え致します」
それが合図で会ったかのように、王の森に住まう全ての精霊達がひざまずき、新たなる王達に仕えることを誓ったのだった。