私のハッピーエンド
不器用同士







あーーあ、憂鬱。この大切な2日間も使って読んだのに、主人公とヒロインは死んで終わり??






拍子抜けした展開。バッカみたい。






死ぬなんて許さないし。ったく。バッドエンドばっか読んでたら気分悪くなる。




ずっと白雪姫読んでた方が何倍もマシ。


文庫本をパタリと閉じ、机に置いた私は言う。


「あーあ、ちょっとがっかり、だってやっぱヒロインとヒーローは結ばれてハッピーエンドでしょ!?離れ離れなのに最後いい感じにするなんて、こじつけが過ぎる、これはバッドエンド。バッドエンドは嫌い」







ヒロインも、ヒーローも、結ばれずに終わるなんて可哀想に。


なんて酷い作者なんだろうか。






「そう思わない?蓮」



「う、うーん、どうかな。基本ミステリーしか読まないから。菜野が読んでるそういう恋愛ものとか、涙腺崩壊系とか、苦手なんだよね」



「それは、」

「何?」

「何でもないよ」

強い口調で私は突き放したように返す。


「あっそ」

「それにミステリーなんてつまらないでしょ」

「そんなことはない」


高校入って委員会で一緒になっただけの彼は、蓮、たしか名字は浅野?


ほら。名字もすぐに出てこないってことはそれほどゆるい出会い方だったって証明。


全然運命的でも何でもないでしょう?もっと、イケメンでかっこいい人と曲がり角でぶつかってみたかったなー




高2になって私は図書委員会に入った。

蓮と初めて顔を合わせたのも、図書委員会の顔合わせの時。




今は放課後。2人で先生に頼まれたくそつまんないプリント整理が終わったから、家から持ってきた読みかけの本を読んでた。


「それ、見して」

蓮が私の小説を指差して言う。

「いいよ、はい」

つまんないよ?と念を押して小説を蓮の方へスライドする。

「ありがと」

と少しパラパラとページをめくった後、私の方へ律儀に返した。


普通に考えて、バッドエンドが好きなんて人はいないはず。

なのにどうしてバッドエンドを書くの?楽しいの?

私は小説を書く身じゃ無いから分からない。


でも。バッドエンドを書こうとは思わない、絶対。何があっても




「つめたーい蓮君に究極の質問ね?」

ちょっとふざけたのに返事もしないの。

最初顔を見たときから分かった。絶対こいつ冷たいなって。

予想は的中でカッチコチだった。ほんとに。

でも、何かと助けてくれたりするから感謝してる。


けど冷たいんだよなぁ
顔は絶対良いから勿体無いって言われてる。

私もそう思う。







「何」

蓮が私を見ながら言う


返事おっせぇから....。


まぁいいか、と1つ短い息を吐いて私は言う










「ハッピーエンドとバッドエンド。どっちが好き?」


沈黙が流れた。





______ああ、ちゃんと真剣に考えてるんじゃん。


悩む顔を真っ正面からずっと眺めてたら目が合った。

「決まった??」

照れてなんてない。決して照れ隠しではない。ほんとう。

逆に、蓮が照れてる。きっとそう、絶対そう。



「分かんない。」

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー。」

はぁ

「やっぱりつまんないね、蓮って。」


「よく言われる」

「気にしないの?」

「うん。無視しようって心の中で唱えてる」

「じゃあ、今の私の言葉も?」

「無視しよう」


「ばっかじゃないの」

そう言って笑えるのが私はすっごく楽しくて、楽しくて







少し悲しい
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