放課後のきみ

「いーだいっ!」


少し足を動かそうとするだけでも膝がひどく痛む。


「我慢!」


「うぅっ…」


そして、やっとの思いで美優はようやく、優斗の背中の方へ向くことができた。


「乗って」


「はぁ、すいません」


まだ心にためらいの気持ちが残ったままだが、美優は優斗の首に手を回した。


「ちゃんと掴まっててよ」


「掴まってます」


優斗は美優がしっかり自分に掴まったことを確認すると、立ち上がった。


「ひゃぁ」


「行くよ?」


「…はい……ってか本当すいません!重いですよね!本当重いですよねっ」


「重くなんてないから」


優斗は少し呆れたように、美優の顔へ振り向き苦笑した。


「は、はぁ」


ん?
どうした?
なんか恥ずかしいぞ…!


美優は自分の顔がホテっていくのを感じた。


「じゃ行きますよ」


優斗は走り出した。


「あっ!先輩かばんっ」


「え、あぁ」


後ろに向き直すと地面には、淋しそうにかばんは転がっていた。


優斗はそのかばんを掴み、走り出した。


.
< 164 / 203 >

この作品をシェア

pagetop