流されて付き合ってみたら意外と俺様でした
幸太がベッドに寄っていく
「香澄、ありがと、気持ち伝わった」
「私、変なとこばかりみせてない?」
「全然、俺が香澄を不安にさせてたな」
「それは私も」
「じゃあお互いに、言いたいことは言おう」
「うん、素直になるよう努力します」
「努力するのは俺のほう、香澄のこと喜ばせられるか……頑張んないとな」
「それはまだ先の段階でしょ」
「なあ、そろそろ名前で呼んでくんない?」
「クセで教室でも呼んじゃうよ」
「俺、隠す気ないぜ」
「そうなの?だって一週間普通だったから隠すのかと思ってた」
「いや、香澄の気持ちをちゃんと確認してからと思ってたから、今日誘って断られたらどうしようと思ってたし、俺、意外と慎重だし、公園で抱きついた時も最初の感覚とか、誕生日に誘おうとか結構考えてたの」
「じゃあ何て呼んで欲しい?晃太がいるからさー、幸ちゃん、幸太くん、幸くん、瀬戸っち」
「(笑)瀬戸っちって男でも呼ぶやついねえよ、幸で……」
「じゃあ、幸、あたしそろそろ帰るね」
「えー」
幸太が時計を見る
7時前だった
「もうこんな時間だったんだな、送るよ」
クラスマッチ当日、男子バスケは決勝戦をむかえていた
幸太率いる3年対晃太率いる1年の対決になった
「先輩、お願いします」
「こっちこそ、最後のクラスマッチ、負けないぞ」
二人ともどんどんシュートを決めていく、バスケ部員は一人しか出れないルールだからどうしてもパスは二人に通りシュート数が増える
幸太のシュートが決まるたびにクラスはもちろん他のクラスからの黄色い声援もとぶ
「すごい二人とも、私、二人がバスケしてるとこみたことないから……上手いんだな」
「弟くん応援したいのもわかるけど、うちのクラスを応援しなよね」
玲奈に注意された
二人がシュート決めるたびに香澄は拍手をしていた
だって、晃太も応援したいしねー、幸は私が拍手しなくても大勢応援してくれる人いるしさ
改めて幸の人気ぶりを体感することになる
「晃太、現役なのにバテてるじゃないか」
ボールをつきながら幸太は挑発する
(クソッ確かにきつい、さすが先輩)
「まだまだです」
晃太はくらいついていく
幸太は他のメンバーにパスする
「あっ」
「頭も使えよ」
幸太は自分の頭を指さす
幸太はボールをゆっくり回し
「あと二分踏ん張るぞ~」
メンバーに声をかける
ディフェンスにいた晃太がマークについてくる
「俺が勝ったら姉ちゃんもらうから、止めにこいよ」
幸太が人差し指でこいこいと誘う
「えっ、どういうことですか?ハアハア、姉ちゃんは物じゃないですよ」
「じゃあ、俺の彼女」
肩で息をしながら幸太についていく
幸太は晃太の動きを交わしてシュートを決める
「先輩、誘導作戦ずるいっすよ」
「本気だよ」
試合終了の笛が鳴る
両チーム整列して挨拶する
幸太はみんなとハイタッチしていく
「先輩……」
「晃太、いくらバスケ部員じゃなくてもバスケは一人でするものじゃないぞ、一人でゴール下までいかなくても仲間がいるかな」
「はい、ありがとうございました、あのさっきの……」
「香澄来いよ」
ふいに呼ばれて香澄はびっくりした
何で名前で呼ぶのよー、目立つじゃん
玲奈に背中を押されて幸太のところへいく
「晃太、俺の彼女」
幸太は香澄に後ろから抱きついてチュッと頬にキスした
「きゃー」
女子の悲鳴が聞こえた
晃太は立ちすくんでいた
「ちょっとやめてよ、みんなの前で……信じられない」
香澄は幸太を突き放し、怒って玲奈と体育館を出る
「痛てぇ、怒らしちまった、じゃあな晃太」
幸太はクラスの集団に埋もれていく、後ろ姿を晃太は見ていた
(先輩と姉ちゃんが付き合う……)
「幸太、さっきのはどういうことだよ」
バスケのメンバーから詰め寄られる
「香澄の事?」
「そうだよ、俺らは香澄ちゃんがバスケ選んだから練習も頑張ったし幸太に回して優勝しようと思ってたのに、香澄ちゃんの笑顔が見たかったからさー」
「……えっと」
「俺たちは香澄ちゃんの隠れファンだー」
「そんなの知らねえし、この間から俺ら付き合ってる」
「えー」
クラスの男女は驚いていた
「知らなかった、俺らのかすみん……」
男子6人が悔しがっていた
「お前はモテるしさ、女子の声援なんていくらでももらえるだろ、俺らはかすみんの応援を励みに頑張ったんだ」
「知らねえし、なんだよ、かすみんってアイドルみたいなあだ名つけて」
「モテない俺らにはかすみんの優しさが身に染みるんだよ」
「大人しいかすみんは幸太のことは好きにならないと思っていたのに、警戒が甘かったな」
5人はうんうんと頷く
クラスの女子が話かけてきた
「瀬戸くんはいつから香澄と?」
「どっちから?」
「えっとまだ最近、二週間くらいかなー、俺から」
「幸太からかよ、それは断らないな」
「香澄ってモテたんだな、まあ、可愛いしな」
「幸太~この顔をボコボコにしたいぜ」
「諦めよう、相手が幸太だしかなわねえよ、そのかわりかすみん泣かしたらボコるからな」
6人は着替えに体育館を出る
「香澄ってあまり男子と話さないから、少し話せるとあの子達は嬉しいみたいね」
「でも珍しく怒ってたからヤバイんじゃない?」