流されて付き合ってみたら意外と俺様でした
週明け、月曜日
幸太は緊張していた
(練習のあと声かける……)
放課後、今日は幸太は女子の指導をしていた
「じゃあ、時間だから今日はここまで」
(終わった……バスケ、ハード)
運動部ではなかった香澄にとっては意外と疲れる
運動神経がないとまではいかないが、今日は瀬戸くんの指導もあり女子達も張り切るし……帰ってだらだらしたい
「佐伯」
「ん?」
「晃太に渡すもんあるんだけど一緒に帰ろう」
「晃太?渡しとこうか?」
「いや、昨日部活いって約束したからちょっと話もしたいし、いいか?」
「あっうん、いいよ」
「じゃあ着替えたら教室にいてくれよな、ボール片付けてから行くから少し待ってて」
「わかった」
幸太は片付けに行く
「香澄~誘われちゃったね」
「あっ玲奈、弟に用事あるんだって」
「そんなの口実じゃん、香澄に用事なければ渡しておいてで済むし、部活に顔出せば渡せるでしょ」
「そ、そっかな」
「そうよー、明日聞かせてよね、瀬戸くん彼女作る気になったのかなー、この間助けたのがきっかけとか……」
制服に着替えながら玲奈のほうが一人で妄想していた
「香澄は彼氏欲しくないの?」
「欲しくないわけではないけど自分が特に好きな人がいないからあまり想像できない」
(でもこの間からのことがあってから晃太の影響もあって少し瀬戸くんを目で追ってるかも、そしてあの声……さっき話したときは思わなかったけど……)
「じゃあ、香澄~バイバイ」
「あっ、バイバイ」
教室から外を見る
(まだかな~)
ドアが開く
「ごめん、遅くなって、友達につかまって……」
香澄は振り向いた
「お疲れ~」
幸太はドキッとした
(か、かわいい……かも)
落ち着け俺、計画通りに試すんだろ
「だいぶ待った?」
「大丈夫だよ」
「じゃあ、帰るか」
「うん」
二人は教室を出る
二人で歩いていると瀬戸くんの人気者のせいかな、見られてるよね
「一緒に帰ってるのかな~」
「彼女?」
囁く声がかすかに聞こえる
香澄は少し後ろを歩いてついていく
すれ違う男子は幸太にバイバイと声をかけ、幸太も応える
香澄が後ろに下がったことなど気付かず幸太は歩いていき
門まで来た
「どっち?」
幸太はやっと後ろを向いた
香澄が下を向いて歩いてきているのに気づいた
「ごめん、歩くの速かった?」
香澄が門に着く
「ううん、あっ、家わかんないよね、私が先に行かなきゃ」
右に向かって歩き出す
幸太は隣で歩き始める
「歩き?」
「うん、20分くらい、近いでしょ、瀬戸くんは?」
「電車」
「次の曲がり角で左だね、いつも誰かと帰ってるんでしょ、晃太に渡すからその先の角でいいよ」
「いつもはバスケ部だった奴と帰ってるけど……まあいいんだよ、送るから」
角について香澄は止まる
「悪いよ、遅くなるのに、晃太のほうが後輩なのに、教室にでも明日来させるよ」
「俺と帰るの嫌なのか?」
「そうじゃないけど、晃太の為に瀬戸くんに迷惑かけれないでしょ」
幸太は香澄に近付く
下を向いていた香澄は幸太の影で顔を上げた
「瀬戸くん?」
「送ってくれる男がいる?」
「い、いないけど……」
「いつもは誰と帰ってる?」
「門まで玲奈と……玲奈は反対方向だから門からは一人で帰るよ、近いし」
「じゃあ一緒に帰ろう」
幸太は香澄の背中にかかった鞄に手を当てて、歩くのを促す
香澄の足は自然に前に出て二人で歩き始めた
背中に当てていた手は香澄の肩へ移動した
(ち、近いんですけど……それに肩に手って……女の子の扱いに慣れてる?)
香澄の家の近くには公園がある
幸太は香澄の手を持って
「ちょっとこっち来て」
公園に引っ張られた
結構大きな公園で遊具もあれば、奥には花壇もありベンチも沢山置いてある
公園の時計は6時半を指していた、秋のこの時間はもう暗くて公園の街灯が灯っていた
幸太は空いているベンチに香澄を座らす
「あの……瀬戸くん?」
幸太は鞄をベンチに置く
「佐伯も鞄おろして」
香澄は言われるままにリュックを肩からおろす
ベンチの後ろは芝生になっていた
幸太は芝生にあぐらをかいて座る
「こっちに来て」
香澄はベンチの後ろにいく
「この前みたいに、俺のここに座って」
「いやいや、私重いから」
香澄は拒否したが幸太は香澄の手を引っ張って自分に引き寄せる
香澄はすっぽりと幸太のあぐらの中へ入る
「あの、やっぱり私……」
香澄が立とうとすると幸太の右手は香澄のウエストをしっかりホールドした
「あぁ、やっぱりいいかも」
「な、何が?」
「この間思ったんだよな、このフィット感と右手の腰の感触とお前の匂い……」
幸太は香澄の匂いを嗅ぐ
「匂いって嫌だよ、やめてよ、只でさえバスケして汗かいたのに」
恥ずかしくて立とうとするががっちり捕まれて動けない