※怪異にご注意※
「お二人してそんなに慌ててどうされたのですか?」
異国の王子が金髪の髪を揺らし頭を傾げた。
「いや!別になんでもないんだ!」
鶴伽様は慌てて眼鏡をクイッと上げて立ち上がった。
それにつられ、あたしも急いで立ち上がり、ズボンの埃を払った。
異国の王子は訳が分からない様子で、不思議そうにあたしと鶴伽様を交互に見た。
「それより、どうしたんだ?宇佐美?」
いつの間にか自分の椅子に腰をかけている鶴伽様は、さっきの事が嘘のように涼しい顔をしている。
あたしの心臓の音が鳴り止まないのがアホらしくなってくる。
「お茶と菓子をお持ちしました」
異国の王子、宇佐美さんは軽く頭を下げると机の上へお茶と菓子を慣れた手つきで並べていく。
その光景はとても様になっている。
宇佐美さんがあたしを見て手招きをする。
「冷めないうちにどうぞ」
その声がとても優しく、場の空気を和ます。
あたしの心臓はいつの間にか正しい心拍になっていた。
「あ、はい」
あたしは急いでソファーに座った。
そして、お茶と菓子のマカロン。
これも鶴伽様の趣味なのか。
あたしは、和と洋を交互に楽しんだ。
意外とお茶とマカロンは合うな。
そんなことを考えながらあたしは気になっていた事を聞いた。
「宇佐美さんって、ハーフなんですか?」
急なあたしの質問に、宇佐美さんは笑って答えた。
「いいえ。私の父と母は両方フランス人ですよ」
「え、でも名前は…?」
宇佐美さんはあたしの空になったカップにお茶を注ぐ。
「私は幼い頃に両親を亡くし、引き取られるはずだった親戚の家を飛び出し、鶴伽様に拾われ今に至るのです」
宇佐美さんはざっくりと説明をした。
いや、後半がざっくりすぎて色々気になって仕方がない。
でも、何だかあまり深入りはしちゃいけないような気がしてあたしはそれ以上聞くのをやめた。