※怪異にご注意※
怪異も変わっている?
今まで妖怪や化け物に触れる事の無かったあたしには全く理解できなかった。
「つまり、あたしの知ってる“ 口裂け女”はもういないって事ですか?」
あたしの質問に少し考える素振りをした鶴伽様が、あたしの座るソファーの前のソファーに座った。
「そういう訳でもないよ。口裂け女が1人しかいないなんて誰が決めた?怪異は私たちが思っている以上に同じ形をしたもの達が沢山いるんだ。同じやり方で人間を怖がらせたりするなんてつまらないだろ?だから、姿形が同じでも伝説とは全く違うやり方をする怪異もいるって訳だ」
言い終えると鶴伽様は少し満足げに笑った。
何となく理解はしたものの、上手くまとまらない。
鶴伽様の考えも混ざっているだろうがあえてそれには触れなかった。
「つまり、今起きている連続殺人事件は口裂け女の仕業かもしれないってことですか?」
「あぁ、確信はまだ無いがね」
口裂け女が殺人ね。
ちょっと信じられない。
でも、口裂け女に口を裂かれた人はどうなったんだろ。
死んだんだっけ?
あたしは曖昧な口裂け女の都市伝説を何とか掘り起こしていく。
「実はね、連続殺人事件の被害者の子が昨日、一命を取りとめたらしいんだ」
あたしが子供の頃に聞いた話を思い出していると、鶴伽様がポケットから1枚の写真を取り出した。
「被害者の“ 大石 恵美”。事件のあった○○市の高校2年生」
鶴伽様が出してきた写真に映る笑顔の女の子。
今の時代なかなかいないおさげの髪型。
可愛いえくぼ。
こんなに可愛い子がどうして巻き込まれてしまったのだろう。
あたしは胸が締め付けられる想いがした。