※怪異にご注意※
そうだ。確かにあたしは何かを求めてここに来た。
紙を貰った時からずっとあたしは…
“ ここに行けば何かが変わるかもしれない”
そう思ってここに来た。
つまらない人生を送ってきたあたしにとっては、一筋の光みたいなものだった。
そうだよね。
こんなつまらない人生になったのは自分で一歩踏み出さなかったから。
こんな人生だったら死んだ方がマシかもしれない。
でも、一歩踏み出す。それができなかったあの頃にはもう戻りたくない。
同じ過ちだけは繰り返したくない。
あの子を救えなかった勇気のない自分には戻りたくない。
「わかりました…」
あたしは拳を強く握りしめた。
「あたしも…やります」
あたしは振り返り鶴伽様を見た。
そこには、嬉しそうに笑う鶴伽様と微笑む宇佐美さんがいた。
「じゃー決まりだな!宇佐美!」
「車の方はもうご用意できております」
宇佐美さんは軽くお辞儀をした。
「じゃー行くか!」
鶴伽様は、宇佐美さんからコートと鞄を受け取り部屋を出た。
「あ!待ってくださいよ!」
あたしが鶴伽様のあとを追いかけるように部屋を出ようとすると、宇佐美さんがあたしを引き止めた。
「優様」
「はい?」
あたしはドアノブに手をかけ振り向いた。
「どうか、鶴伽様をよろしくお願いします」
そう言い、宇佐美さんは悲しげな顔で深々と頭を下げた。
「ぇ、はいっ」
宇佐美さんの姿があまりにも美しかったのであたしは、つい頷いてしまった。
「おーい!2人共早くしろ!」
下から鶴伽様の声が響く。
「はーい!今行きまーす!」
あたしはそう言い宇佐美さんの方を見る。
「さあ行きましょう」
宇佐美さんいつもと変わらない笑顔で言った。
まるで何事もなかったかのように。