消えてしまう君に捧げる


105…105…あ、ここか。


一応トントンと2回扉を叩き、出来るだけ音を立てないように開ける。


病室は、とても広かった。


恐る恐る室内に足を踏み入れ、あの…クラスメイトの飯島ですけど…と言うと、奥の方から女の子の可愛らしい声がした。


「どーぞ」


扉を閉めて足を前に動かす。


すぐに大きなベッドが見え、そこにひとりの少女が横たわっていた。


彼女を見た瞬間、綺麗だ、と思った。


透けるように白く綺麗な肌に、長い黒髪。

大きな瞳に形の綺麗な唇。

だけどどこか儚さがみてとれる雰囲気。

そんな今にも消えてしまいそうな彼女に、我ながら恥ずかしいけど、しばらく僕は見惚れてしまった。



「あの、どうしたの?」



「あ、えっ、と…あぁこれ…プリント」



「ありがとう、はは、こんなの貰ってもしょうがないのにね、もう学校行けないし」



はははっ、と笑う彼女。全然笑えない。


安藤さんはプリントには1枚も目を通さずに、紙袋を傍に置いてあった机の上に置いた。



「初めまして、安藤小春です。よろしくね飯島くん」



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