消えてしまう君に捧げる


「よろしく…あ、じゃあ僕はこれで…」



「え!?もう帰るの?私とお話しようよ、いつもひとりでいるから寂しいの」



「え…あ…まぁいいけど…」



お話って、具体的に何を話せば…


ここに座って、と指をさされた椅子に腰掛ける。


「私の病気、どんな病気なのか知ってる?」


「う、ん、まぁ人並みには…」


「透明病。日に日に身体が薄くなっていって、最終的には消えちゃう病気。なんだかおかしいよね、そんな病気、ホントにあるの?って疑っちゃう」


「…よく、笑えるね」


近いうちに君は自分が今言ったように消えてしまうのに、どうしてそんなにニコニコしてられるの。


僕は今、こんなにも苦しいのに。


僕が病気のことを人並みに知っていると言ったのは、嘘だ。本当はその辺にいる誰よりも理解している。


なぜなら、身近にいたから。透明病を患い、消えてしまった人が。


「だって、笑うしかないじゃん。もう泣くのには疲れたし、怒るったって怒りの矛先をどこに向ければいいのか分かんないし。じゃあ笑うしかないよね」


そう言ってまた彼女は笑った。


残酷だ、あまりに残酷すぎる。


「ねぇねぇ飯島くんはさ、友達とかいるの?」


「…いないけど」


「そうなんだ、私と一緒だね」


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