学校一クールなキミのお世話係になりました
淡々と話す彼の目はどこか遠くを見ているようで、急に心配になる。


そこには、悲しみや落胆とかの感情が読み取れなかった。


多分、もっと深い意味の諦めに近いものがあるように見えた。


「もともと、俺の顔も性格も父親似だから、母とは昔から反りが合わなかったしな」


でもだからって、北原くんだけ置いて出て行ってしまうなんて、あんまりだ。


大人には大人の複雑な事情があるのかもしれないけど、それでも彼のことを思うと悲しかった。


なんて言ってあげたらいいのか、わからなくて、無意識に彼の腕を掴んでいた。


今にも彼の心がここからどこか遠くへ行ってしまうんじゃないかと不安になった。


せめて、寂しくないように一緒に気持ちに寄り添ってあげられたらいいのに。


こんな時私にも、もっともっと彼の気持ちがわかってあげられたらいいのに。


クールな北原くんはありのままの自分をさらけだすことは、多分得意ではないだろうから。


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