学校一クールなキミのお世話係になりました
すっとんきょうな変な声がでてしまって恥ずかしかったけど、次の瞬間私は椅子から勢いよく立ち上がっていた。


うそでしょ?私ったら何をするつもりなんだろう。
だけど、体の奥底から湧いてくる熱い力に突き動かされるみたいに自分で自分を止められない。


「あら、あなたどうかした?」


亜美さんが私に話しかけると同時に彼は捕まっていた左手を引っ込める。


「ええっと」


「もしかしたら、あなたってよく彼と一緒に帰っていた子じゃない?」


「あ、それは」


蛇に睨まれたカエルのごとく、美人に睨まれた普通女子の私はほんとはこの時、手も足も震えていた。


だけど、自分の右手をギュッと握り勇気を絞り出す。


私は彼の右手。


怪我をさせてしまったあの日からずっと。


今この瞬間も、そうでありたい。
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