涙の裏側    ~もう一人の私~
悩んでいる私に

もう一度ポンと頭を叩いて

「落ち着いた?
咲ちゃんは、一人暮らし?
帰って大丈夫なら、送って行くよ。」って。

「はい、大丈夫です。
最近発作がなかったから……ちょっと驚いたけど
以前はよくあったから。」

「だったら、送って行くよ。」と言って

車を再び発進させた。

「はい、到着。」

お礼を言って下りようとした私に

ペンでささっと何やら書いて渡された。

「これ、俺の携帯の番号。
遅くに発作が出て、不安になったら連絡しておいで。
友達はいないって言ってたし
幼稚園の先生達は、今ちょっと連絡しずらそうだったからね。
遠慮しないで、かけて来たら良いよ。」

そうだった。

発作の事で、すっかり忘れてたけど………

幼稚園も大変だったんだ。

「2日続けて送ってもらって、ごめんなさい。
ありがとうございます。
携帯番号、もらっても良いですか?
たぶんもう大丈夫だと思うけど…………
持ってたら安心なので。
悪いことには使いません。」ニッコリ笑って答えると

「これなら、大丈夫そうだね。
いつでも電話して良いからね。
どうせ、昼間はお客の少ない喫茶店で
のんびりマスターしてるだけだから。
じゃあ、おやすみ。」って帰って行った。

変な人。

知り合ったばかり。

それも、お客とマスターの関係なのに…………

スッゴく親切だったかと思うと

あっさり帰って行って。

ホントに今までに、出会ったことのない人。

面白い。
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