涙の裏側    ~もう一人の私~
「今日は遅かったんだね。
俺、帰るけど……どうする?
帰るなら送って行くよ。」

なんだ、もう閉めちゃうんだ。

マスターのコーヒーを飲んで帰りたかったんだけどなぁ。

「マスターのコーヒーが飲めないんだったら帰ります。
歩いて帰れるから、気にしないで帰って下さい。」

笑って送ると

「今日の咲ちゃんは、ホントに冷たいなぁ。
帰るなら乗って行ってよ。」って。

だって、いつもいつも乗せてもらうわけにはいかないもん。

「大丈夫だから…………」

遠慮する私に被せて

「ああ言ってるんだから、乗せてもらえば?」って。

この人………

イジワルではないんだけど………

言い方にトゲを感じるんだよねぇ。

マスターも『良いヤツだ』って言ってるから

言葉づかいで損してるんだろうなぁ。

私もキツく思われるから分かるんだよね。

「ホントに迷惑じゃないですか?
いつもだから、申し訳なくて……。」

彼の言葉を信じて、マスターに聞いてみたら

「もちろん。
迷惑だったら、始めっから誘わないよ。
遠慮しないで一緒に帰ろう。」って。

私は性格がキツくて、普段周りに敬遠される。

だから……

誘われた時にどこまで甘えて良いのか判断が出来ない。

これって、嫌われることを恐れてるのかな?

嫌われるのが怖いって、ちょっと不思議な感覚。

最近、ちょこちょこ感じる気持ち。
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