俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~


私がお湯を沸かしている間、和樹さんはキッチンの目の前にあるダイニングテーブルにタブレットや書類を広げ、真剣な表情で目を通す。

書斎は別にあるのに、最近彼はわざわざリビングやダイニングでお仕事をすることが多い。

私のたてる物音が気になったりしないのかな。
なんて思いながら、ティーポットに茶葉とドライハーブを入れて少し蒸す。

出来上がった紅茶をダイニングにいる和樹さんのもとへ運ぶと、匂いにつられたのか彼が顔を上げた。

「なんだか甘い香りがする」
「カミツレの紅茶です。少しだけはちみつを入れたんですけど、和樹さん甘い物大丈夫でしたよね?」

テーブルの上に置かれたティーカップの中には柔らかな湯気をたてるハーブティー。
その透き通った金色の水面を見た和樹さんは、「カミツレ?」と不思議そうに首をかしげた。

「カモミールって言った方が一般的ですかね。リラックス効果があるハーブなので夜にぴったりのお茶なんですよ。ハーブティーはお嫌いでしたか?」
「いや。とくにこだわりはないから普段コーヒーばかり飲んでいた」
「あんまりコーヒーばかり飲むと、胃によくないですよ。会社では仕方なくても、家にいるときくらい体に優しいものを口にしてください」

私の言葉を聞きながら、和樹さんはティーカップに手を伸ばす。ひと口飲んでほっとしたようなため息をついた。


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