俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
じっとナスを見下ろす表情は真剣そのもので、見守っている私までなんだかハラハラしてきた。
「あ、あの。和樹さんはナスのなにが苦手なんですか? 食感ですか? 味ですか?」
思わずそう問いかけると、和樹さんは視線をナスに向けたまま「見た目だ」と短くこたえる。
「見た目、ですか?」
「なんだか黒光りしていて、虫みたいだろ」
「虫って……!」
大真面で言った和樹さんの答えが意外過ぎて、思わず吹き出してしまった。
「変か?」
むっとしたように聞かれ、口元を手で隠しながらなんとか笑いをこらえる。
「だって、虫みたいだからナスが苦手なんて」
「子供の頃家政婦に食わず嫌いはよくないと、無理やり口の中に突っ込まれて吐き出したことがある」
もともと見た目が苦手だったのに、その強引なやり方で、余計に受け付けなくなってしまったんだろう。
「もしかして、それ以来一度もナスを食べたことがないんですか?」
そう問うと和樹さんはうなずいて顔をそらす。