俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「気に入ったか?」
「もちろんです!」
こくこくと勢いよく首を縦にふってから、「でも……」と鈴花は眉を下げた。
もしかして、ふたりでこの部屋に泊まるのはいやだと言われるかなと思っていると、彼女はまったく違う心配を口にする。
「でも、あんなに大きな羽毛布団をダメにしてしまった上に、こんなに豪華なスイートルームに泊めてもらうなんて、和樹さんにたくさん出費させてしまって申し訳ないです」
そんな堅実な彼女に、ぷっと小さく噴き出した。
今は経営難におちいっているとはいえ、老舗旅館に生まれお嬢様として育てられてきたというのに、驚くくらい堅実で庶民的な彼女がいじらしく可愛く思えて仕方がない。
「そんなこと、気にしなくていい」
俺がそう言うと、本当に?と問いかけるような上目遣いを向けられる。
わずかに首をかしげてこちらを見上げる表情に、ぐっと心臓をわしづかみにされた。
彼女の背後には、大きく豪華なベッドがある。そこに押し倒して組み敷いてしまいたい。なんて欲望が湧き上がって、慌てて俺は視線をそらした。
「もしこういうインテリアが好きなら、自宅のマンションも鈴花の好きなように改装すればいい」
「そ、そんな。とんでもないです……!」
「家にいる時間は俺より鈴花のほうが長いんだから、遠慮することはない」
「今の和樹さんのお部屋で十分快適ですし、たまにお泊りするならいいですけど自宅がこんなヨーロッパ調のゴージャスなお部屋だったら落ち着きませんから」
鈴花はぷるぷると首を横に振りながらそう言う。