俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「穂積さんは同行されなかったんですか?」
「えぇ。今回は副社長ひとりで十分な案件でしたから。それで副社長に届け物を頼まれましたので」
「届け物?」
首を傾げながら差し出された取っ手のついた紙の箱を受け取る。
上品なデザインの箱にはなにがはいっているんだろうと思っていると、穂積さんが説明してくれた。
「ケーキですよ。副社長がお弁当のお礼にと買ったのに帰れなくなったので、せめてケーキだけでも届けたいと」
「お弁当の、お礼……?」
「鈴花さんはどんなものが喜ぶのかと、真剣に悩んで選んでいたんですよ」
きょとんとしている私の前に、トート型の保冷バッグを差し出される。
受け取ったバッグは朝渡したときよりあきらかに軽くて目を見開いた。
まさか、あのかわいらしいお弁当を食べたの!?
和樹さんのことだから、愛情弁当にドン引きして手を付けずに突き返されると思っていたのに!
「副社長は愛情たっぷりの手作り弁当を、とても嬉しそうに食べていましたよ」
「嬉しそうにって……!」
「食べるのがもったいないと写真をとったり、ハート型の卵焼きに感心したり、ウインナーをタコの形に切るとうわさには聞いていたけど実物は初めて見たと感動したり」
私がつくったかわいらしいデコレーション弁当を嬉しそうに食べる和樹さんを思い浮かべて、思わず顔が熱くなる。