俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
そんなつもりじゃなかったのに! と頭を抱えて叫びたい気分だ。
ていうか、ほかの人に見られたくないからひとりで食べてくださいってお願いしたのにっ!
動揺で言葉がでない私に向かって穂積さんは「本当に仲がよろしいようでうらやましいです」なんてほがらかに笑う。
あんなハートがちりばめられた可愛らしいお弁当を夫に作って職場に持たせるなんて、浮かれた新妻だと思われているにちがいない。
誤解です! いやがらせだったんです!
そう弁解したかったけど、和樹さんに嫌われるための努力なんて言えるはずがなくて、顔をしかめてぐっとこらえた。
すると穂積さんはそんな私を見ながら、おもむろに口をひらく。
「……和樹は、手作りのお弁当なんて作ってもらったことがないから、本当に嬉しかったんだと思いますよ」
その柔らかな口調に、意外に思って首をかしげる。
「子供の頃も、作ってもらわなかったんですか?」
「和樹の母親は体の弱い方でしたから」
「たしか、和樹さんが小学生のときに亡くなられたんでしたっけ……」
幸恵さんから聞いた言葉を思い出しながらそうつぶやく。