俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「すごくうれしかったです。ありがとうございました。ケーキはひとりじゃ食べきれなくて弟の隼人を呼んで一緒に食べたんですけど、隼人も美味しいって喜んでました」
私の言葉を聞いて、和樹さんが顔を上げてこちらを見た。
「あれは弁当のお礼なんだから、ありがとうなんて言わなくていい」
「でも、本当に本当にうれしかったんです」
あの和樹さんのメッセージが書かれたメモは、大切に部屋にしまってある。たぶん一生捨てられない私の宝物だ。
和樹さんは少し考え込むように黙り込むと、私を抱きしめる腕を緩め大きなため息を吐き出した。
なんだろう。
あんなことでいちいち喜ぶなんてうっとうしいと思われただろうか。
と不安になって和樹さんのことをふりかえる。
「そんなによろこんでくれるなら、香港でもなにか土産を買ってくるべきだった」
険しい顔でそう言った和樹さんに、私は首をかしげた。
「どうして土産を買うことを思いつかなかったんだろう。早く鈴花の顔を見たくて仕事を片付けて日本に帰ることばかり考えていて……」
後悔しかない、という様子で頭を抱える和樹さん。
私はケーキというよりも和樹さんの気持ちが嬉しかったのに、物をプレゼントされたことを喜んでいると勘違いしているようだ。