俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
私は慌てて和樹さんの服の裾を掴んで言い募る。
「私も早く和樹さんの顔が見たかったです! お土産よりも、こうやって和樹さんが帰ってきてくれることが嬉しいですから……!」
そう言った私の剣幕に、和樹さんが目を丸くした。
その表情に自分の必死さに気付いて途端に恥ずかしくなる。
「本当に、俺が帰ってきて嬉しいのか?」
確かめるように問いかけられ、顔を赤くしながらうなずいた。
すると和樹さんの表情がほどけるように柔らかな笑顔になった。
いつも朝家を出るときのように両手を広げられ、私はドキドキしながら和樹さんの方へ歩み寄る。
すると長い腕が腰に回り、ぎゅっと引き寄せ抱きしめられた。
「ただいま、鈴花」
その言葉に、私が待つこの家が彼の帰る場所だと認めてもらえたようで、感激で胸がつまった。
「おかえりなさい、和樹さん」
たどたどしくそう言うと、和樹さんが嬉しそうに微笑んだ。
その表情に勘違いしそうになる。
この抱擁は、夫婦らしくなるためのスキンシップなのに。
私たちの関係は愛のない偽物の夫婦なのに。
どうしよう。この人のことが好きで好きで仕方ない。