俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~





旅館の敷地の隅に建てられた母屋は、客室のある本館ほどではないけれど、充分歴史を感じさせる立派な日本家屋だ。
私は自分の部屋に入り、後ろ手で襖をぴしゃりと閉める。

ひとりきりになったとたん、口からため息がもれた。

「結婚……」

ぽつりとつぶやいて、その現実味の無さに心細くなる。

私がこの歳で誰かと結婚するなんて思ってもみなかった。
しかも、相手は国内有数の大企業の御曹司様なんて。

でも日野屋にとっては、大宮建設の御曹司と私が結婚し親族になるのは願ってもないチャンスだろう。

江戸時代から百五十年以上。長きにわたり日野屋を守り続けてきた創業者の血が、私には流れていなかった。



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