俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「私は母親として子供と接するよりも女将として旅館に立つ時間のほうがずっと長くて、お客様を優先して子供たちには我慢ばかりさせていました。しかも血がつながってないから、鈴花は私たち家族に余計に遠慮してしまうのかと思うと、もっと違う家庭の子供になっていたほうが幸せだったんじゃないかと後悔したこともあります」
「そんなことないよ! 私はお父さんとお母さんに育ててもらえて幸せだった……!」
慌てて否定しようと鈴花が腰を浮かせると、母親はこちらを見て優しく微笑んだ。
「ありがとう鈴花。本当に優しい子ね」
そう言ってから、ご両親は俺に向かって深く頭をさげた。
「だから、鈴花には幸せになってほしいと思っています。和樹さん、どうか鈴花のことをよろしくお願いします」
隣で鈴花がぐっと息をのんだのがわかった。必死に涙をこらえるように、大きな瞳が潤んでいる。
その表情を見ていると、愛おしさがこみあげてきた。
俺は大きく息を吐き出し、真剣な表情でご両親に深く頭を下げる。
「はい。鈴花さんを必ず幸せにするとお約束します」
そう言って座卓の下でそっと鈴花の手を握ると、彼女は肩をふるわせて、うるんだ瞳でこちらを見ていた。
決して彼女の両親の前だからついたその場しのぎの嘘ではなく、この可愛らしい妻を俺は全身全霊で一生かけて幸せにしたいと心から思った。