俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「……笑え」
その人は、前を向いたまま私にだけ聞こえるようにささやく。
「必要なのは、美しく可憐な妻という名の飾りだ。その綺麗な顔に笑顔を浮かべて、ここにいる参加者たちに幸せそうな花嫁の姿を見せつけろ」
私の夫である和樹さんは端正な顔に優雅な笑みをたたえながら、冷たい声でそう言った。
生まれてから今日まで二十三年間、私は一度も恋をしたことがない。
デートやキスどころか、異性と手をつないだことすらない、恋愛経験のゼロの箱入り娘だ。
そんな私、日野鈴花は、七歳年上のこの人と愛のない結婚をする。
今日から大嫌いなこの男の妻になる。