俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「日本の建設業界のプリンスと、香港の大金持ちの李一族のお嬢様の密会現場だって」
「密会現場?」
ようするに、デートってこと?
スーツ姿の和樹さんに抱き着くように寄り添うのは、長い黒髪が美しい長身の美女だった。
「この記事には、和樹さんが香港まで彼女に会いに来て密会してたって書いてある」
「確かに、先週急な出張で香港にひとりで行ったけど……」
「それ、本当に仕事?」
そう問われ、瞬きをしながら視線をスマホから隼人の顔へと移した。
「俺、この記事を友達に教えてもらってから、ずっと考えてたんだ。なんで和樹さんが結婚してるって既成事実を必要としたのか。それってさ、この女の人のためなんじゃないの?」
「どういう意味?」
「この女の人も、結婚してるんだって。しかも香港政府の高官と。そんな立場じゃきっと簡単に離婚なんてできない。だから和樹さんは自分も結婚して妻を隠れ蓑にして、この人との不倫がバレないようにしたんじゃないの?」
「私が、この人と付き合うための隠れ蓑……?」
そうつぶやいて、血の気が引く気がした。
出会ったばかりのころの和樹さんの言葉を思い出す。
愛なんて必要ないと、必要なのは妻という名の飾りだと、確かに彼は言っていた。
だけど……。