俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「それにしても遅いな」
ロビーにある掲示板を見ながらつぶやいた。
彼女が乗っているはずの便は到着済みという表示になっているのに、いつまでたっても出てくる気配がない。
「この便で間違いないんだよな?」
「そのはずですが。念のためもう一度確認してみます」
そう言って穂積がスマホを取り出した。
そのとき、スーツのポケットに入れていたスマホが震え出した。
画面に表示されていたのは鈴花の名前。
仕事中だとわかっているのに電話をしてくるなんて珍しいなと思いながら耳にあてる。
「もしもし」
『姉ちゃんが変な女に連れてかれた!』
電話から聞こえてきたのは弟の隼人くんの怒鳴り声で、驚いて表情を変えた。
「どういうことだ」
『知らねぇよ! いきなり家にあんたの浮気相手がやってきて、話があるって姉ちゃんを連れて行ったんだよ!!』
「浮気相手?」
『香港の大金持ちの女だよ! 知ってんだぞ、あんたが姉ちゃんに出張だって嘘ついて、あの女と会ってたこと!!』
「……美蘭か」
俺がそうつぶやくと、穂積が電話をしながら俺に声をかける。
「彼女は教えられていたよりひとつ早い便で日本についてる。俺たちに迎えにこいと言って、鈴花さんがひとりで家にいるすきに連れ出したんでしょう」
はめられた。
そう理解して胸にものすごい焦りと怒りが押し寄せてきた。