俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
突然マンションにやってきた美蘭に連れ出され、無理やり車に乗せられたのは数時間前。
ハンドルを握る運転手と彼女のやりとりを聞いていて、どこにいくかなんのプランもないことを察した私は、「日本らしいおもてなしはいかがですか?」と提案してみた。
「私の実家は百五十年続く古い旅館を営んでいるんです」そういうと、美蘭は目を丸くした後「変な子ね」と声を上げて笑った。
「なんで拉致された被害者が行先を提案して、犯人をもてなそうとしているのよ」
「和樹さんの妻である私と話をしたかっただけなんですよね? だとしたら、あなたは私を拉致した犯人ではなく、わざわざ遠くから訪ねてくださったお客様です。和樹さんの妻として、おもてなしするのは当然のことです」
隼人の言うようにもしかしたら彼女と和樹さんは不倫関係だったのかもしれない。
けれど、和樹さんは前回の出張も今回のお出迎えも仕事だと言っていた。
だとしたら、彼女は和樹さんだけではなく会社にとっても大切なゲストだ。
彼の口から真相を聞くまでは妻として和樹さんを信じたい。
そう思いながら背筋を伸ばすと、美蘭はぽかんとしたあとケラケラと笑い出した。