俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
うつむいて、お湯の中でかかえた自分の小さな膝を見おろしていると、美蘭が「綺麗ね」とつぶやいた。
露天風呂から見える日本庭園のことを言っているのかな、と顔を上げると美蘭はまっすぐに私を見ていた。
「スズカは、本当に綺麗ね」
しみじみと繰り返され、慌てて両手で体を隠す。
「そんなことないです! 美蘭のほうがずっと色っぽくて綺麗で……」
「私は偽物だもの。造花と一緒」
「偽物?」
首をかしげた私を無視して、美蘭は手を伸ばしお湯から出た私の肩をなぞった。
「色白で肌はすべすべだし、傷ひとつないし、とても綺麗。大切に大切に育てられてきたんでしょうね。うらやましいわ。こんな歴史ある旅館に生まれた、本物のお嬢様が」
「美蘭こそ李グループのお嬢様なのに、私をうらやましいなんて」
「お嬢様、なんて反吐がでるわ。父は香港のスラム街だった九龍城出身の成り上がりよ。金儲けのためならなんだってやってきた」
美蘭は言いながら視線を庭へと移す。
青々とした緑や、苔むした岩や、堂々とした黒松。そして季節の花が咲いているのを見て、まぶしそうに目を細めた。