俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~


「ホンコンフラワーって知ってる? プラスチックの造花。父のオフィスにも飾ってあるわ。それを見るたびに吐き気がするの。美しければそれが本物だろうが偽物だろうがどうでもいいという父の下品さが大嫌い」

そう吐き捨てると、美蘭はこちらを向いて美しい顔でにこりと笑う。

「私も一緒よ。父には五人の子供がいて、末っ子で唯一の女だった私が一番甘やかされて育ったわ。末娘が可愛かったからじゃなく、容姿が優れている女は利用価値が高いから。造花と一緒で見た目の美しさだけを求められて、心の中で子供たちがなにを考えていようが父にとってはどうでもいいのよ」

美蘭の言葉には家族に対する愛情は少しも含まれていなくて、聞いているだけで胸が痛くなった。

「私は十六のときに三十歳も年上の高官と結婚させられたわ。娘を使って政府と太いパイプを作って十年間甘い汁をすすって満足した父は、私を夫と離婚させて次はカズキと結婚させようとしている」
「和樹さんと……?」
「このままうまくいけば、大宮建設は香港で地下鉄工事を受注するわ。そうなればアジアでの信頼と知名度がますます高まって、この先大きな仕事が舞い込むでしょう。父は私とカズキを結婚させて、大宮建設のブランドと技術力を乗っ取るつもりよ」


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