俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~

「私も結婚したのはいいけれど、和樹さんの冷たい態度にこの人とずっと一緒に暮らすのは無理だと思いました。だから和樹さんが私に愛想をつかして離婚しようと言い出すように、嫌われようとしたんです」
「どんなことを?」
「わざと料理の失敗をしたり、朝大きな音をたててたたき起こしたり、嫌いな物を食卓に並べたり、間違って羽毛布団をやぶって部屋中羽毛だらけにしたこともあります」
「お人形さんみたいに可愛いくせに、ずいぶん過激なのね」

私の話を聞いて、美蘭はケラケラと声を上げて笑った。

「でも、そんな私を怒らず全て受け止めてくれる和樹さんに、嫌われようとしていたはずなのにどんどん惹かれていったんです。今では心から彼を好きだと思うようになりました。はじめて人を好きになって、愛する人と一緒にいられることがこんなに幸せだってはじめて知りました」
「……うらやましい」

ぽつりとそうこぼすと美蘭は空をあおいだ。

「一年前に香港で出会ったカズキは、仕事にしか興味のない男だった。そんな彼が結婚したとたん『妻を大切にして幸せにしたいと思ってる』なんて信じられないことを言うからおどろいていたけれど、あなたみたいな子と一緒に暮らしていたら、幸せにしてあげたいと思ってしまう気持ちがわかるわ」
「あの、美蘭の旦那様は……?」

おずおずとたずねる。
美蘭は上を見たままで首を横に振った。


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