俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「十年一緒に暮らしてはいるけれど、夫はほとんど家に帰ってこないわ。愛人でもいるんでしょう。そんな生活が当然だと思っていたけれど、私もスズカのようにわざと夫に嫌われて離婚を言い出されるようにあがいてみればよかった」
そうつぶやいてから、視線をこちらに向けて微笑む。
「今までこんな話誰にもしたことはなかったのに、どうしてこんなに本音が漏れてしまうのかしら。ついつい人の気を緩ませる日本の温泉の気持ちよさが怖いわ」
「今からでも遅くないですよ」
全てをあきらめたような美蘭がもどかしくて、私は立ち上がり彼女の肩を掴んだ。
「旦那様にもお父様にも、美蘭がなにを考えてどうしたいと思っているのか、きちんと伝えた方がいいです」
「バカね。できるわけがないじゃない。父は金のためなら手段を選ばずに成り上がって来た男よ」
「じゃあ、美蘭はお父様の言う通りに旦那様と離婚して今度は和樹さんと結婚をするんですか? 道具のように利用されて愛のない結婚を繰り返すなんて、そんなの悲しすぎます」
私の言葉を聞いた美蘭は、黙りこんでしまった。
葛藤するように視線を泳がせた後、私のことを見る。
「じゃあ、賭けをしましょう」
「賭け……?」
美蘭の提案に、私は目を瞬かせた。