俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
こういう場合、祖母からいい話と言われた提案が、実際その通りだったことは一度もない。
「いい話って……」
「縁談ですよ、縁談」
俺があからさまに顔をしかめたのを完全に無視して、祖母はうきうきと話を続ける。
「菊ちゃんっていう私の大切な親友がいたんですけどね、昨年亡くなってしまったのよ。彼女がいなくなって私もすっかり落ち込んでふさぎこんでいたんだけど、そういえば昔お互いの孫を結婚させたいわねって約束していたのを思い出してね」
その孫ってまさか俺のことか。
自分のまったくあずかり知らぬところで、そんな勝手な約束が交わされていたことに、めまいを覚える。
「その菊ちゃんのお孫さんは鈴花ちゃんと言うのだけれどね、とーーーーっても可愛いお嬢さんなのよ。雪のように色が白くて目がぱっちりとしていて、お人形さんみたいに可憐でね」
そう言いながら写真を取り出し、テーブルの上に広げて見せる。
そこに映っていたのは、華やかな振袖姿のひとりの少女の写真だった。