俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~

「それに、無二の親友との大切な約束も守れないなんて、申し訳なくてあの世で菊ちゃんと顔を合わせられないわ」
「大切な約束って、つい最近まですっかり忘れていたんですよね?」

思わず矛盾点をつっこむと、祖母は少しも動じずすました顔で微笑む。

「すっかり忘れていたところに、日野屋の経営が危ないって噂を聞いて、この約束を思い出したんです。これはきっと天国の菊ちゃんが助けてくれって言っているんだとぴんときましてね」
「なんですかその日野屋って」
「菊ちゃんが大女将をつとめていた老舗旅館ですよ。菊ちゃんが亡くなってから経営が思わしくないようで、縁談のついでに支援を申し出たんです」
「なにを勝手に」


縁談のついでに支援を申し入れるなんて。それじゃあまるで、金をやるから娘をよこせと迫る悪代官のようだ。

「あら、この縁談に不満があると言うなら、ほかに結婚したい女性がいるんですか?」

そう問われ、ぐっと言葉に詰まった。



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