俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「鈴花ちゃんはおばあさまの菊ちゃんの元で幼いころから厳しくしつけられ、大切に育てられてきたそうよ。由緒ある老舗旅館のお嬢様なら、あなたの嫁として申し分ありません」
礼儀作法も知性も気品も兼ね備えたお嬢様。
しかも相手は経営に行き詰まり援助を必要としている。
「こちらは俺が結婚しているという既成事実がほしい。相手は旅館への資金援助がほしい。お互いの利害が一致した、いわゆる政略結婚ですね」
俺が納得してそう言うと、祖母はイヤそうに顔をしかめた。
「利害って。和樹さんはそういうロマンのないことばかり言うから、素敵な恋ができないんですよ。せっかく端正な顔立ちをしているのに、仕事ばっかりでまともな恋愛もしないで。イケメンの無駄遣いとはこのことですね」
イケメンの無駄遣いって。いったいそんな言い回しをどこから覚えてくるんだとあきれる俺をよそに、祖母はうきうきと嬉しそうに見合い相手の写真を見下ろしていた。